MONO知り会
も の し り か い
新しくメンバーになった 4 人が
MONO の過去作品の DVD を鑑賞し
MONOを深堀していく企画
- 第4回
- 我々「MONO一年生」メンバーによる、過去作品鑑賞企画。第四回は尾方宣久推薦作品『なるべく派手な服を着る』
まだ僕たちに出会う前のMONOは一体どんな顔を見せてくれるのだろう……
故きを温めて新しきを知る
この企画を通して、皆様と「MONO30年」の時間を共有したいと思います。
MONO 石丸奈菜美 高橋明日香 立川 茜 渡辺啓太 2019年5月
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九里家はとても歪な家族です。九里家では長男が一番権力がある。「おいおい」の代わりに「おひおひ」を使う。結婚はしては駄目、パスポートを取るなという家訓がある。家族皆が大好きなたまり鍋というお鍋料理がある。 最初はそんな家族あるのか?と言うくらい可笑しくて笑えてくるのです。でも作品が進んでいくに連れ、確かにどの家族にも不思議なルールがあったり、小さい頃からダメだと言われていた事を今だに守っている自分がいたり…に気づいていく私がいました。九里家に関わっている全員にコンプレックスや闇がある。どうしても人って私だけ、僕だけと思ってしまう部分がある。皆それぞれコンプレックスはあるし、それを口に出すか出さないか。この作品は皆がそれを自然と会話の中で繰り広げている。そこに変なリアルさを感じてしまいます。
5男の一二三が派手な服じゃない服を着て、自分がいつもいた場所で泣くシーンが大きな一歩を踏み出す瞬間でとても好きでした。 -
不思議な家族の物語。会話の中で、兄弟ならではの「あるある」と思える部分と「そんなわけないだろ」と思わず突っ込んでしまうような部分の塩梅がちょうど良く、また義理の姉・義理の妹との関わり方というか、それぞれの距離感の取り方が絶妙でした。尾方さんが演じる、6人兄弟の5番目には共感する部分も多く、終始感情移入ていました。尾方さんが印象に残っているという「その『おひおひ』っていうのやめてくれる」のセリフが出てきた時は、作品や役に対しての尾方さんの向き合い方を感じた瞬間でもありました。
当時、東京公演を生観劇しました。久しぶりに客演を招いての公演だったとのことで、これまで5人のMONOしか観ていなかった僕にとっては、純粋に作品を楽しむものから「いつかMONOに出演したい」と一つの目標となった作品でした。 -
五男の一二三は、とにかく存在感が薄い。必死で兄弟らの視界に写り込もうとするも、ひたすらに忘れられ、ぞんざいに扱われる。(今作に限らず、尾方さんの演じる情けない/哀しい/みじめな男が本当に好き。笑えるし、ツラいのです。)しかしある出来事をきっかけに、その「家族」は閉鎖的で、脆いものだったことが露呈する。兄弟たちがアイデンティティを見失って大騒ぎをする一方で、一二三は自分がどこにいるのか、どこにいたのかがやっと見えてくる。
初めて皆の視線を受け止めた時、一二三がなんだか幼い姿にも見えてきて、泣けてしまいました。
派手な服でも、シンプルな服でも、自分で選んで着こなせるようになりたいナア。 -
タイトルがストレートにキャラクター個人を指すのは(まだMONO知りの過程ですが)珍しいなと思いました。承認欲求や自己肯定感、自尊心なんてものは正に私自身が持て余して困っている部分です。なのでコミカルな会話の中でも苦しく思う部分がありつつ、客観視するとこうなのかな…と、漠然としていたもどかしさを言葉にできたりしました。一二三の内実だけでなく、自己のアイデンティティを他者への愛情や関係性に依存していた兄弟たちの、これからの生活の妄想はその時の自分自身の精神状態を知られるのかな、なんて。歪な人間関係を表した美術が格好良くて、なんだか救われました。増改築しちゃっているけれど、「追々(おひおひ)」自然に生きたいなと思った次第でございまする!
尾方宣久 おすすめコメント
ずっと劇団員だけで上演をしてきたMONOが、14年ぶりに客演をお招きしたのがこの作品。不安や戸惑いもあったけど、初めて共演する皆さんに、劇団としても作品としてもとても助けられました。土田さんが書く家族の話の中でもとりわけ複雑な設定で、ありえないけど妙に納得してしまう、そんな面白味に溢れています。好きな台詞は「その『おひおひ』っていうのやめてくれる?」です。