MONO知り会

も の し り か い

新しくメンバーになった 4 人が
MONO の過去作品の DVD を鑑賞し
MONOを深堀していく企画

第7回
我々「MONO一年生」メンバーによる、過去作品鑑賞企画。第7回は『約三十の嘘』
まだ僕たちに出会う前のMONOは一体どんな顔を見せてくれるのだろう……
 故きを温めて新しきを知る
この企画を通して、皆様と「MONO30年」の時間を共有したいと思います。

『約三十の嘘』をおすすめくださったのは、20年以上にわたりMONOの音響スタッフとして参加してくださっている堂岡俊弘さん。いつも穏やかに見守ってくれつつ、その選曲には作品への熱い愛とメッセージがこもっています。この作品の音響を担当されたのも堂岡さんだそうです。
第47回公演「その鉄塔に男たちはいるという+」、稽古中のMONO知り会開催。「MONO知り会も長くなってきたな」と思いつつ物語の世界に……。

MONO 石丸奈菜美 高橋明日香 立川 茜 渡辺啓太  2020年2月

『約三十の嘘』

MONO第19回公演|1996.7 ◇扇町ミュージアムスクエア
MONO第28回公演|2001.9 ◇AI・HALL ◇シアタートラム ◇女性センター「ムーブ」ホール

昔一度仲間の裏切りでバラバラになった詐欺師の集団が5年ぶりに集まる。もう一度仕事をする為に北海道へ向う寝台列車に乗っている7人の男女。そして3ヶ月後、帰りの寝台列車。うまくいったはずの仕事だが売り上げの入った鞄がない。一体誰が騙しているのか。コンゲーム的展開で、信じたいのに信じられないと いう微妙な関係を、行きと帰りそれぞれの列車のコンパートメントを舞台に描いた作品。

撮影:谷古宇正彦

堂岡俊弘さん おすすめポイント
堂岡さんにはおすすめのポイントをたくさん挙げていただきました。堂岡さん、ありがとうございます。
・寝台特急を舞台に選んだ土田さんのセンス。
・コンゲームの面白さ。
・最後のシーン奥村さんの後ろ姿。
・頑張ってるスタッフワーク。
・MONO新人がキャスティングされての再再演の楽しみ。

  • 渡辺啓太(わたなべ けいた)

    俳優

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    サスペンス風に展開される作品の中で、それでもしっかりと存在するMONOならではの会話劇。
    登場人物がそれぞれ「嘘」で本当の自分を隠し、お互いの関係性が急にひっくり返ったり、最後には自分達が何者かわからなくなってしまうような…そんな寂しさも漂う作品でした。
    音響、照明、舞台美術、衣装のチームワークで、しっかりと止まることの許されない密室が作り上げられていました。
    しっかりと作られた密室で繰り広げられる言葉遊びは、他の作品と比べても「ワンシチュエーション感」が強く、一本の映画を見ているような感覚でした。(実際この作品は実写で映画化もされていますし)
    日常ではありえない設定や環境の中で、でもそこにいる人たちはいたって普通の人たちで、お互いに普通の会話をしている。不条理とリアルの間のちょうどいいところで隠れん坊をしているような、そんな作品でした。
    堂岡さんから「もし若手で再演をするなら…」というお言葉を頂いたので、色々なパターンのキャスティングを想像して楽しんでました笑
  • 立川 茜(たつかわ あかね)

    俳優

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    タイトルの通り、嘘が沢山散りばめられた物語でした。行きの列車では、小さな疑いには蓋をして和気あいあいとしていたのが、帰りの列車で互いに疑心暗鬼になっていく。「怪しい」人がどんどん変わっていくので、一緒にぐるぐる考えながら観ていました。
    殺伐とした空気の中で突然ぽつんと現れた、些細な「真実」がとても印象的で、「しょうもないことだけ本当の事を言うんだな」という台詞が切なかったです。
    全部はネタバラシしない、観客があれやこれやを推理する余白を残してくれたのも嬉しい。そして、「世間/社会」との対比がなく、あくまでその空間での人間模様に限定して描かれているのが、MONO作品としては珍しいなと思いました。
    併せて、堂岡さんのコメントにあった「スタッフワーク」にも注目して観ていました。
    まず、舞台転換。客入れ状態では列車の外観を見ていたはずが、明転して芝居が始まと車内の様子に切り替わっている!そして列車がトンネルに入る度に変わる音響、照明… 演劇は総合芸術だと言いますが、物語に没入できるこの空間・時間は色んな力を集結させて作っているんだと、改めて感じました。
  • 石丸奈菜美(いしまる ななみ)

    俳優

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    いや〜めっちゃオモロかったです!と子どもみたいな感想を……(笑)キャッキャと鑑賞の世界に浸かりました。
    これまでMONO知り会で触れてきた作品よりも「大人だな」と改めて思ったり。会話の中で、男女の関係性を色濃く感じたからかもしれません。
    佐々木と宝田のシーンはドキドキして、もじもじしそうになり「あ、みんなと一緒に観てるんだった……」と自分を律したりしました。
    偽ることに関して、自己と他人の境界線なんて曖昧なんだなと思ったり……。
    美術・転換も素敵で興奮しました。ワンシチュエーションだけど「外」がある感じ、たまらなかったです!
  • 高橋 明日香(たかはし あすか)

    俳優

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    この作品は「ハテノウタ」の時に兄さん達と同級生の役の設定だったので同い年として会話するトーンやツッコミの勉強をしたくて見ました。
    MONOの劇団員だった2人の女優さんのお芝居を何度も見返したのを覚えています。
    増田さん演じる宝田が自分でボケて自分でツッコミを入れるシーンや、「ババロアちゃんって呼ばないでよ」と何度も繰り返す言葉のリズムなどのタイミングなどが絶妙で…
    久しぶりにDVDを皆で鑑賞して今まで観たMONO作品の中で”大人な作品”だなと思いました。
    小さな嘘から大きな嘘まで境目がなく、ゲームしている内容が本当の真実なんじゃないかとふと思わされたり、恋愛も微妙な距離感で相手を想う言葉がとても切なかったです。

    また土田さん演じる志方が水沼さん演じる佐々木に「上手くなったじゃない」という台詞は2人のその頃の関係性など、勝手に色々想像してしまいました。

MONO第19回公演より(撮影:南浦旦)