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尾方宣久の京都ハードボイルド


第5回 金閣寺

ご無沙汰しています。夏の間しばらく休んでしまいましたが、今月から再開いたします。
なにぶん、京都の夏は暑いもので、外に出るという気を萎えさせてしまうのです。
やせっぽちの私がさらにやせっぽっちになってしまいました。11月の公演までには元に戻るよう頑張ります。

さて、今回はどこに行こうと迷っているうちにお昼を過ぎてしまった。しかも今日は夕方からMONOの稽古がある。行きたいところ、行くべきところはたくさんあったが、もう迷う時間もない。前回が銀閣寺ということで、安直に金閣寺に行くことにする。
金閣寺は京都の観光スポットとして、…人気だったか、人出だったか、が清水寺に次いで2位である、と何かの記事で読んだ記憶がある。あまり定かではない情報をのせるのはどうかと思うが、その人気の高さを見過ごすわけにはいかない。1位の清水寺もいずれ行かねばなるまい。
前回の銀閣寺のときには、見た目の派手さに惑わされない違いの分かる男を気取ってみたのだが、しかし金閣寺も銀閣寺に負けず劣らず魅力的である。決して惑わされているのではない。いや、最初は惑わされたかもしれない。その金ピカっぷりに、その人気の高さに、その京都を象徴する存在に。
僕が初めて京都に来たときに最初に訪れた観光地は金閣寺である。情も移るというものだ。京都と言えば、金閣寺、これは外せない。

そんなこんなで、自転車でせっせこと北へ北へと向かう。暑くない、そうだ、もう季節は秋なのだ。汗なんか全くかかない。むしろ少し肌寒いくらいだ。半袖で出てきたせいもあるかもしれない。
金閣寺近くになると、西大路通りから左大文字の後が見える。そう、更新を怠っていた夏の間も京都ではいろいろあったのだ。なんか道が混んでるなあと思ったら「祇園祭」だったり、大勢の人がうろついているなあと思ったら「五山の送り火」だったり、そうこうしているうちにもうすぐ京都三大祭りのひとつ「時代祭」もあるらしい。
世間は三連休ということもあり、金閣寺もやはり観光客であふれている。さすが2位だ。 観光シーズン、そして天下の金閣寺ということで覚悟はしていた。修学旅行生に、家族連れ、カップル、外国人観光客、あらゆる人がいる。僕のような、京都に住んでいて、男一人で、デジカメをぶらさげているような奴は一人もいない。しかし、これがハードボイルドなのだ、と自分に言い聞かせる。

金閣寺について少し…。
舎利殿「金閣」が特に有名なため、一般には金閣寺と呼ばれているが、正しくは「鹿苑寺(ろくおんじ)」と言う。室町幕府の三代将軍、足利義満によって建立されたことは有名な話。1397年、義満は鎌倉時代の有力者、西園寺公経(さいおんじきんつね)の別荘を譲り受け、山荘北山殿を造営する。金閣などの建築や庭園は極楽浄土を表したと言われる。義満の死後に義満の法号にちなんで「鹿苑寺」と名付けられた。舎利殿(金閣)は応仁の乱でも焼失は免れたが、1950年に放火され全焼してしまう。現在の金閣は1955年に再建されたもので、1987年には金箔の張り替えが行われた。そして1994年に世界遺産に登録。
銀閣寺と同様、世界遺産である。また上の写真にもあるが「歴史的風土特別保存地区」でもあり、特別名勝、特別史跡でもある。とにかくすごく特別なところなのだ。

拝観受付を済まそうと奥へ進むと、気になる看板が…。「写経のおすすめ」である。 「写経をして心の安心を得よう」と書かれてある。ふむ。そういえばこの企画、ただ観光をするだけで自ら何も体験していない。ここはひとつ、おすすめされるままにやってみようではないか。と男らしく決断。迷っている時間はない。夕方からは稽古だ。

「写経の方はどうぞお入り下さい」という張り紙があるが、その矢印の方向には寂しげな建物があるだけ。何の案内もない。恐る恐る引き戸を開けて入ると、しばらくして「金閣寺」と胸に刺繍の入った作業着を着たおじさんが出てくる。さっそく写経をする部屋に案内される。どうやら僕以外には誰もいないらしい。まずは写経の説明を受ける。

●写経とは〜お釈迦様が説かれた言葉(お経の一部)を文字として書き写すこと。
●写経の作法(簡略)
 1・身心を清浄にする。
 2・姿勢正しく、特に背筋は伸ばす。
 3・合掌
 4・一字一佛の気持で写経。
 5・書き終えたら合掌。
 6・奉納。
●写経の魅力とは〜
 ・ひたすら無心になる事。
 ・写経は心のやすらぎ、自然に心を清め、自分自身を見つめる。
 ・心にゆとりが出来、角がとれ丸くなる。

など、15分くらい説明を聞く。夕方からの稽古にあせる気持ちもあるが、ひたすら無心になるよう頑張る。先に代金をということで千円払う。その後で、今度は金閣寺についての説明を聞くことになる。その歴史、建物の構造、庭園の植物についてまで、かなりの時間を僕ひとりに割いてくれる。そしてその長い話が終わるとまた代金を請求される。 すでに払ったことを説明すると、今度はおじさんのプライベートな話になる。

金閣寺での写経には3種類ある。
●四弘誓願文(約60文字)12分程度。
●延命十句観音経(約75文字)15分程度。
●般若心経 (約300文字)60分程度。
どれでも料金は一緒なのだが、せっくなので般若心経(約300文字)に挑戦することにする。稽古に間に合うのか、と一瞬思うが、写経をする前から心にゆとりが出来たのかもしれない。話の長いおじさんのおかげで角がとれ丸くなれたのかもしれない。

本来ならば、墨をするところから始めるべきなのだそうだが、ここでは簡略式ということで筆ペンかサインペンで写経をするということ。さすがにサインペンではどうかと思い、筆ペンで書くことにする。
書道教室のような部屋に一人きりになってしまう。まずは合掌。普段合掌なんてすることがないので何だ気恥ずかしい。「いただきます」のような合掌になってしまう。最初の一行「摩訶般若波羅蜜多心経」を書く。意外と上手く書ける。が、早くも正座をしている足が痺れてきてしまった。 おじさんの長い話のせいだ。あのとき足をくずしておくべきだったと後悔するが、時すでに遅しだ。お経部分だけであと十七行ある。いかんいかん、邪念が入りすぎている。無心でやらねばと心を新たに二行目に取りかかる。しかし今度は右手に、書いた部分のインクがつかないか気になってしまう。いかんぞ「一字一佛」の気持を忘れるな、と言い聞かせて集中する。
このお経はどういう意味なんだろう、「無」という字が多いな、あ、姿勢が崩れている、もう30分経ってしまった、あれ何か雨降りそうだな、しまった、洗濯物を干したままだ、といろいろな邪念が入り込んでくる。それらを必死に振り払いながら何とか書き上げる。
最後に願い事を書くところがある。「家内安全」とか「安産祈願」とか「ストレス封じ」とかそういうものを書くところだ。僕は最近衰えがちの身体のことを考え「身体健全」とお願いする。まだスペースがあるので「公演成功」と今度のMONOの公演の成功を願う。健気だ。
書き上げた紙を今度は奉納しなければならない。しかし立てない。完全に足が痺れてしまったようだ。苦笑いのおじさんに半分はあなたのせいだと思いつつも、何とか立つことが出来、仏様のもとへ紙を置いて合掌をする。ふらふらになりながらも、本題の金閣寺を参拝しなければと外に出ると、雨が降り出していた。

銀閣寺と同様、受付を済ませて中に入るとすぐに、メインの金閣を見ることが出来る。周りの観光客たちは声を出して驚いている。金閣寺観光経験者である僕は今更その輝きには驚きはしないが、彼らの驚きにやさしい同意をしてしまう。経験者の僕から言わせてもらうと、彼らの予想以上に金閣が金ピカだったのだろう。僕もそうだった。
ベランダに干してきてしまった洗濯物が気になるのと、写経でかなりの時間を費やしてしまったことで夕方からの稽古にあせるのとで、なんとなく早足での参拝になってしまう。が、痺れた足がなかなか回復しない。おかしな歩き方で金閣寺巡りをすることになる。

●陸舟の松(写真左)〜「りくしゅうのまつ」。京都三松のひとつ。義満が盆栽で育てていたものを植えたと、写経のおじさんが言っていた。そのおじさんも言っていたのだが、金ピカの金閣寺に見とれている間に、この陸舟の松を見逃してしまう人が多いらしい。

●銀河泉(写真中)〜「ぎんがせん」。義満がお茶の水に使ったと伝えられている。

●龍門滝(写真右)〜「りゅうもんのたき」。「滝」というわりにはちょろちょろとした水の流れである。鯉が滝を登ると龍になると言われる中国の故事「登竜門」に因んだ「鯉魚石(りぎょせき)」が置かれている。

●夕佳亭(写真左)〜「せっかてい」。江戸時代の茶人・金森宗和が好んだ数寄屋造りの茶室。夕日に映える金閣の姿が殊に佳いということからこの名がつけられたといわれている。ここはメインの金閣の次に人気スポットらしくかなりの人が集まっていた。狭いところで身動きがとれず、修学旅行生たちの記念写真に何度か入ってしまったような気がする。

●不動堂(写真中)〜本尊は弘法大師が作られたと伝えられる石不動明王。首から上の病気、特に眼病に霊験あらたかであるとのこと。それならばと「視力が回復しますように」とざっくり大きな願いごとをしておく。「だめならコンタクトレンズの調子が本番中だけは良くなりますように」と控えめなお願いも忘れない。

●金閣寺名物 お抹茶(写真右)〜果たしてお抹茶は金閣寺名物なのか?他のお寺でもお抹茶席はよく見かける。金閣を見ながら飲めるのかと言えばそうではない。なにやら小さな庭を見ながらのお抹茶である。

拝観料の元を取れるくらいの拝観とお願いごとを済ませて、最後に金粉入りの梅茶を試飲してほっこりして帰路につく。おいしかったのだが、金閣寺だからといって金粉はいらないと思う。
足の痺れもなくなり、洗濯物も大した被害もなく、稽古にも間に合った。

写経をした般若心経はどんな意味なのか気になり、少し調べてみる。内容は 「空」の境地を説いているとのこと。空の境地とは何事にもこだわりのない心のことで、悟りにもこだわるな、煩悩の克服にもこだわるな、煩悩の克服や悟りにこだわると、それが執着になってしまい、かえって悟れない結果になってしまう。こうしたこだわりをすべて捨てれば、おのずから空の境地がひらけ、彼岸=悟りへ到達できるということ。
ふむ、全く逆の心境で写経をしてしまったようだ。


今日のおみやげ

金閣寺のテレホンカード。台紙は金ピカ。50度数で900円なり。…高いです。
携帯電話の普及により、公衆電話がなくなっていってるのは周知の事実。
しかし、いざというときのための公衆電話。実際、実家のある福岡は今年は地震に台風といろいろとありました。またそういう災害時以外にも公衆電話から電話するのも悪くないかもしれません。電話にでる前に「誰からだろう?」「きっとあいつだ」というときめきを思い出させてくれるはず。…でてくれないかもしれないけど。

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