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尾方宣久の京都ハードボイルド


第4回 銀閣寺〜哲学の道

金閣寺には何度も行ったことがある。
大学が近いこともあったが、やはりあの金ピカっぷりが魅力的であった。
立命館大学のオープンキャンパスで初めて京都にきたとき、大学の入学式のとき、東京の友人を案内するとき、他にも何度も訪れたのだが、その金ピカっぷりに毎回目を奪われてる。実際見たことのある人はご存知だろうが、予想以上にピカピカしている。本当に眩しい。正に古都京都の象徴である。

一方、銀閣寺は一度もない。
住んでいるところからはかなり離れているので、これまでなかなか足を運ぶ気持ちになれなかった。近くを通ることも稀にあったのだが、実際に訪れることはなかった。おそらく銀閣寺が銀でピカピカしているものだったら訪れていたに違いない。だがご存知のように金閣寺とは違ってピカピカしていない。何か普通だ。是非とも行ってみたいというような心躍る衝動に駆られることはなかった。
しかし僕も年齢を重ねて、ピカピカしていないものにも興味をひかれる男になった。派手ではないが、歴史や奥行き、深みを感じさせてくれるものに対して心が揺さぶられることがある。つまり大人になったのだ。味のある年配の役者さんをみていいなぁと思ったり、カセットテープで音楽を聴くことに喜びを感じたり、チェーホフやシェイクスピアの戯曲を抵抗なく読むことができるようになったりと、違いの分かる男になってきている…ような気がしている。
銀閣寺に対しても、ただ単に観光名所だからという理由だけでなく、その地味っぷり(金閣寺と比較してのことだが)そしてその建築のいい仕事っぷり(なんとなく)に心惹かれるようになり、今回訪れてみる気になったのである。

その銀閣寺に行くつもりだった先月はあいにくの雨のため断念したのだが、今日は梅雨時にも関わらずすこぶる快晴である。しかもただの快晴ではない。ものすごく暑い。後でニュースで知ったのだが、この日はこの夏一番の猛暑だったそうだ。猛烈に照りつける太陽の下、自宅から銀閣寺までかなりの距離であるが頑張って自転車で行く。しかし途中で頑張らなければよかったと思う。銀閣寺に着いたときには汗だくだった。

今までの行き当たりばったりの観光を少し反省して、今回は予習をしてみた。
銀閣寺とは、正しくは「東山慈照寺」といい、室町幕府の八代将軍の足利義政が、祖父である足利義満の建てた金閣寺にならって、「山荘東山殿」を建立したのがその起こりである。 応仁の乱によって焼け野原となった京都で、政治よりも文化的生活を好んだ義政が隠居するために建てたものらしい。国宝であり 世界遺産でもある。世界遺産を500円で見ることが出来るのに多少畏れを感じる。

予想以上に銀閣寺付近は観光客で溢れかえっている。6月も下旬になり観光シーズンも終わりかけたと思っていたのだが、修学旅行生や一般の観光客の人達でいっぱいだ。銀閣寺に辿り着くまではおみやげ屋さんの連なる通りを歩いていかなければならない。「おいでやす〜」「兄さん、どこから来はったんどすか〜」京都の観光地特有の耳慣れない京都弁をやりすごして、銀閣寺に到着する。

拝観料を払って中に入るといきなり間近にメインである観音殿(銀閣)を見ることができる。びっくりする。いきなり過ぎて心の準備ができていない。記念撮影をしている人達の邪魔にならないよう気を配りながら観音殿(銀閣)を見つめる。
パンフレットによると、「鹿苑寺の舎利殿(金閣)、西芳寺の瑠璃殿を踏襲し、本来、観音殿とよばれた。二層からなり、一層の心空殿は、書院風。二層の潮音閣は、板壁に花頭窓をしつらえて、桟唐戸を設けた唐様仏殿の様式。閣上にある金銅の鳳凰は東面し、観音菩薩を祀る銀閣を絶えず守り続けている」とのこと。……わかる、わかるぞ。一階部分と二階部分の違い、金閣寺にもある屋根の鳳凰、哀愁ただようその佇まい。銀ピカでなくてよかったと思う。

ちなみに銀閣寺=銀ピカ疑惑もあるようで、いろんな推測がされている。
●銀箔を施そうとした痕跡がないことから、もともとそんな計画はなかった。
●銀箔を施そうとしたが、応仁の乱で幕府が財政難だった為に断念した。
●壁面の漆塗の壁面の上に銀箔が貼られていた。
●金閣寺を模倣したことから、銀箔とは関係なく銀閣寺と呼ばれるようになった。
● 江戸時代の大修理により天井に銀箔を施したことから、その当時の人々がそう呼びだした。
とまあ様々な推測がされているのだが、2006年より銀閣寺に銀箔が本当に張られていたかどうかの調査が銀閣寺と文化庁の間で始まるということ。もし銀箔が施されていたという結果になったとしたら、銀閣寺は銀ピカにされてしまうのだろうか。願わくば今のままであってほしい。

●向月台(写真左)〜銀沙灘の一部。砂を盛って富士山のような形を造っている。どうやって造るのか不思議なくらい綺麗に出来ている。なんとなく、富士山というよりプリンみたいだ。雨が降ったらやはり崩れるのだろうかと思っていたら、タクシーの運転手さんが修学旅行生に「そやな、また造り直さなあかんな」と説明していた。修学旅行生たちの「え〜?」「マジでぇ?」という反応にまんざらでもない様子だった。その後も人の流れに押されてかなりの間、彼らとは一緒に銀閣寺巡りをすることになる。

●銀沙灘(ぎんしゃだん、写真中)〜白砂を敷きつめ段形に盛り上げ縞模様にしている。建立当初からあるものではなく、江戸時代に造られたものといわれている。月の美を鑑賞するためのものらしい。しかし拝観時間の関係で我々が月の美を鑑賞するのは不可能のようだ。

●展望所からの眺め(写真右)〜階段や坂道を上がって、展望所から眺めた銀閣。京都の市街地までも見ることができる。ただ後ろからどんどん人がやってくるのでそうのんびりと眺めてもいられずにそそくさと下りるはめになる。

銀閣寺には「苔」をピックアップしているコーナーがある。

●銀閣寺の大切な苔(写真左)〜 ヤマゴケ、スギゴケ、コスギゴケなど。
●ちょっと邪魔な苔(写真中)〜ミヅシダゴケ、サナダゴケなど。
●とても邪魔な苔(写真右)〜 ジャゴケ、ミズセニゴケなど。

苔をピックアップしていること、苔の種類の多さ、そして悪意のある分類の仕方に思わず足が止まる。
なるほど 園内の至る所に苔が生えている。そして園内にある苔には「大切な苔・スギゴケ」と札が丁寧に立てられている。園内を綺麗に保つのは大変なんだと思うと同時に「とても邪魔な」というレッテルを貼られた苔を少し可哀想に思う。しかし「ちょっと邪魔な苔」とはどんなふうに生えているんだろう。その微妙な立場が逆に「とても邪魔な苔」よりも可哀想に感じる。

観光客で溢れかえった銀閣寺を脱出し次なる目的地へと向かう。
「哲学の道」である。
銀閣寺から若王子神社まで約2キロに渡る風情ある散歩道。
この「哲学の道」も銀閣寺と同様、訪れたことがない。せっかく銀閣寺まで来たのだから、「哲学の道」も歩かないわけにはいかない。春は桜、初夏はホタル、秋は紅葉と話題に事欠かない粋な小径である。そして「哲学の道」という名前にも大人びた魅力を感じる。哲学者・西田幾多郎が思索に耽り歩いたことからその名がついたそうだ。 「日本の道百選」にも選定されている。こちらも予習はバッチリだ。

銀閣寺とは打って変わって人が少ない。ホッとする。
テレビや雑誌でしか見たことのない哲学の道を実際に歩くと、まるで芸能人を目撃したかのような得意げな気分になる。しかし今更ながらで全く自慢にもならないし、自慢する相手もいないので「これがあの有名な哲学の道かぁ」と一人で小さく思うに留める。銀閣寺とは違いノロノロといい感じで歩ける。そう、人が少ないので自分のペースで歩くことが出来るのだ。そして何より木陰がずっと続いているので涼しさいっぱいだ。桜や紅葉の季節ではなく残念だったがところどころに紫陽花が咲いていた。

哲学の道沿いにはいろんな寄り道スポットがある。 法然院、大豊神社、若王子神社などの寺社仏閣、喫茶店やお店もある。
この哲学の道の名前の由来の人物である「西田幾多郎碑」もある。しかし草に覆われていて肝心の石に刻まれている文字が見えない。(写真左)ちなみにそこに刻まれている言葉は「人は人、吾はわれ也、とにかくに吾行く道を吾は行くなり」…わかる、わかるぞ。多分そのままの意味だと思う。いろんな思考の末に辿り着いた言葉として受け止めるとやはり重い。

また、あぶらとり紙で有名な「よーじや銀閣寺店」を見つける。(写真中)奥の方ではお茶などもできるようだ。そして入り口付近には電話ボックスがある。今どき公衆電話なんか珍しい。近付いてよく見ると「恋のかなう電話ボックス」と書かれてある。「この電話ボックスの上には翁(おきな)と媼(おうな)がいます。桜橋で出会った二人が幸せになれるようにとの思いが込められています。」とのこと。ちょっとしたおせっかいだなあと思う。公衆電話から電話すると相手は出てくれないかもしれないよなぁとか、普通に使う人がいたとしたら逆に恥ずかしい思いをするはめになるだろうなぁとか、 余計な心配をしてしまう。
が、あまり長い時間電話ボックスの前で思案していると、これからこの電話で告白をする人に間違えられてしまうと思い、慌てて哲学の道に戻る。

それにしても結構歩いた気がするがまだ終点は見えない。これと同距離以上をまた戻らなくてはならないのか、とても哲学的とは言えない思いに耽り歩く。と、ようやく若王子神社付近の終点に到着する。(写真右)散歩というよりは遠足に近い。

復路にて「おめん」という有名なうどん屋さんは何処かと尋ねられるが、答えられない。近隣のお店までの予習はしていなかった。…無念。帰宅して調べると銀閣寺周辺ではかなり有名なお店らしい。京都通を気取るのはまだまだ早過ぎるようだ。


今日のおみやげ

暑さの為、汗でびしょびしょに…。あいにくタオルやハンカチなど何も持っていかなかったので、今回はハンドタオルを購入しました。このハンドタオルは「竹久夢二専門店」にて買いましたが、竹久夢二は特に銀閣寺にゆかりのある人物ではないようです。京都では二年坂というところで彦乃という女性と暮らした時期があるそうです。銀閣寺のおみやげにするには少し無理がある気がしましたが、気付いたのは帰宅してから。これでは、なぜかおみやげ屋さんの定番であるアイドルの白黒プリントTシャツと同じではないか、むむぅ…。しかし、買い物としては実用的だしデザインも京都っぽいので後悔はしていません。

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